小児歯科の専門医指導医として既に活躍されている院長先生の新築移転開業に合わせ建設された木造2階建ての施設です。
小児専門歯科という特性に合わせ、従来の「病院らしさ」を抑え、患者さんが緊張せずリラックスできる空間作りを目指し設計を行いました。
診察室では、院長先生からは「直射光が入らない空間」を、スタッフさんからは「自然光が溢れる空間」を求められました。これら相反する要望に対し、診察室の外壁部分に16mの連続した吹抜けを計画し、上部に窓を設けることで間接光が溢れる空間を実現しました。この「光のヴォイド」により自然光が柔らかく室内に降り注ぎます。上階からの間接光は梁の影を落としながら、時間帯や季節による光の変化を感じさせる豊かな体験を生み出します。
加えて、子供たちの動きを観察するために、事故が起きないように設計が求められました。一般的な歯科医院とは異なり、間仕切り壁をなくし広い一体的な空間を実現することが必要でした。これを実現するために、格子状に組んだ2階の床梁を屋根から吊ることで大空間を支える構造にしました。
施設全体の基調となる色は、落ち着きのある土色を選びました。また、子供たちが使う部分には色を加えることで、視覚的なサインとしても活用できるように配慮しています。
木材を多く使用しながらも、明るく開かれた診療空間を作り出すことで、医院らしくない、温かみのある空間を実現したと感じています。
- 名称
- 石切の小児専門歯科
- 所在地
- 大阪府東大阪市石切
- 竣工
- 2025
- 構造
- 木造
- 用途
- 歯医者/診療所/クリニック
- 撮影
- 倉本あかり